業務委託×AIで組織の成長を加速させる。株式会社AiKAGI・富家翔平氏が語る、「実行力」を高める方法

著者:服部麻梨
「1人マーケって、もうマーケじゃないんですよ」

そう語るのは、株式会社AiKAGI(以下、AiKAGI)代表取締役CEO、富家翔平氏です。

富家氏は、コニカミノルタジャパンでBtoBマーケティング組織を立ち上げ、30人を超えるチームを率いた経験を持ちます。潤沢な実行力を持つ大企業から、スタートアップへと転身。そこで直面したのは、戦略設計から意思決定、施策の実行におけるすべてを1人で担う「1人マーケ」としての日々でした。

富家氏が経験した「1人マーケ」の葛藤。そしてその状況を突破するカギとなったのが、業務委託活用による実行力の調達でした──。
株式会社AiKAGI富家氏が業務委託の活用で得られたこと
1.スピード感を持って実行力を調達できる
2.考える仕事に集中できる
3.社内にないスキルと視点が加わる
4.事業と組織が前進する
目次

1人マーケの限界――「考える仕事」が消えていく

株式会社AiKAGI 富家翔平氏
コニカミノルタジャパンでBtoBマーケティング組織を立ち上げ、30人を超えるチームを率いていた富家氏は、その後スタートアップへと転身。それまでチームで分担していた役割を1人で抱えることになり、BtoBマーケティングの構造的な難しさと、1人で担う限界を強く実感したといいます。

「正解がない」BtoBマーケティングの難しさ

富家氏は、これまで事業フェーズも、業界も違うさまざまな現場でBtoBマーケティングに携わってきました。その経験のなかで特に難しさを感じているのが、BtoBマーケティングの施策には「正解がない」ということです。

BtoBマーケティングには、この施策をやれば成果が出る、というものがないんです。事業モデルや組織体制、保有しているデータやアセット――。企業ごとに置かれている状況は大きく異なるので、その前提が違えば、最適な打ち手も当然変わってきます(富家氏)

さらに近年では、AIの加速によって参入企業が増え、「単発の施策で差をつけることはますます難しくなっています」と、富家氏。

1つの施策で大きなリターンが得られることはなく、継続的な価値提供と施策の積み重ねがなければ成果は出ません。BtoBマーケティングで成果を出すためには、「状況を見極めて打ち手を選び続ける力」と、それを「実行し続ける体制」の両方が不可欠なのです。

「1人マーケ」の限界

富家氏がスタートアップに「1人マーケ」として入社し、まず実感したのは「1人では何もできない」という現実だったといいます。

「1人マーケ」って、もうマーケじゃないんですよ。構造上、無理なんです。(富家氏)

本来マーケターの業務には、戦略設計や顧客理解といった“考える仕事”と、施策の実行や運用といった“実務の仕事”があります。

「戦略を考える」「市場や顧客を理解する」といった“考える仕事”は、優先度は高いものの、緊急度は低くなりがちです。しかしその一方で、メール配信、展示会準備といった“実務の仕事”は、期日が明確で緊急度が高いという特徴があります。

1人でその両方を抱えてしまうと、緊急度の高い実務に引っ張られて、考える時間が失われていきます。「今やらなきゃいけないことがあるから……」とやっていると、夜の20時。そこから家のことをして、また考えようとしても、最初は頑張れても続かないんです。気づくと考える仕事は、どんどんできなくなっていきます。(富家氏)

「考える仕事」が後回しになる理由

“考える仕事”と”実務の仕事”は本来、別々の人間が担うべき機能だと富家氏はいいます。

こうした状況では、どうしても緊急度の高い実務が優先され、本来向き合うべき“考える仕事”が後回しにされることは少なくありません。そうなれば、戦略を考える時間は失われ、マーケティングとしての機能そのものが成り立たなくなっていくでしょう。

1人では、自分から出る総アウトプット量が、「頑張る」以外に増えないんです。残業するしかない……。でもそれは絶対に続きませんから、すぐに「さあ、誰がいるかな」と、探し始めました。(富家氏)

この状況を乗り越えるために必要だったのが、不足している「実行力」を外部から補うという考え方でした。

業務委託の活用とは、「実行力」の調達

「考える仕事」に集中するためには、実務を担う手が必要です。その手をどう調達するか――。富家氏が選んだのは、業務委託の活用でした。

スタートアップのスピード感に、正社員採用では間に合わない

スタートアップでは、事業の変化に合わせて、必要なリソースをすぐに確保することが求められます。

しかし、正社員採用では、求人を出して2ヵ月、内定承諾まで1ヵ月、入社までさらに1ヵ月。最短でも3〜4ヵ月、長ければ半年以上かかることも珍しくありません。

スタートアップでは、スピードがとても大切ですが、それだと正社員採用では時間がかかり過ぎます。業務委託なら、究極「翌週から」ということも可能な世界です。事業成長スピードに対して圧倒的にリソースが足りない現実を解消するには、外部のプロ人材の力を借りる以外の選択肢はありませんでした。(富家氏)

こうした背景から、富家氏は業務委託の活用を選択します。

正社員採用を待っている数ヵ月の間にも、事業は動き、変化します。その時差を埋めるために、業務委託というプロ人材の活用は、欠かせない選択肢だったのです。

業務委託の活用を決めてからは、関わるメンバーの数も一気に増えていきました。依頼業務は、広報、Webサイト制作、MAツールの設計・運用、イベントディレクション、営業代行など多岐にわたります。

実行力を支える「調達力」は、マーケターのスキルになる

業務委託の活用において重要になるのが、「誰に頼むか」という判断です。富家氏が重視するのは、リファラル、つまり信頼できる人からの紹介です。

必要なタイミングで、どの領域を誰に任せるべきかを判断し、適切な人材にアクセスできること──。この一連の力を、富家氏は「調達力」と呼びます。

誰に依頼するかによってアウトプットの質やスピードは大きく変わります。必要なときに適切な人材にアクセスできるツテが、組織の実行力を左右し、マーケターとして欠かせないスキルのひとつになっていくと考えています。(富家氏)

さらに、業務委託が入ることで、社内にはない視点やスキルが加わるという点も見逃せません。同じやり方の延長線ではなく、新しい発想やアプローチが入ることで、組織の意思決定や打ち手の幅が広がります。

富家氏がこの経験を通じて確信したのは、必要な人材を見極め、適切なタイミングで外部リソースを活用する「調達力」が、今後マーケターに欠かせないスキルになっていくということ。特にスタートアップにおいては、この調達力の有無が、そのまま組織の成長スピードを左右すると話します。

業務委託のパフォーマンスを高める依頼の条件

業務委託を活用すると決めても、うまくいくかどうかは依頼側の姿勢にかかっています。富家氏自身、発注側としての失敗を重ねながら、その確信を深めてきました。

失敗の99%は、依頼側が正しく役割を伝えられていない

富家氏は、「失敗したと感じるケースの99%は、依頼側が役割や期待値を十分に伝えられていないことにある」と語ります。では、具体的に何を伝えるべきなのでしょうか。

富家氏が重視するのは、以下の3つの要素です。

まずは、「理想の状態・現状・課題・背景」を整理し、前提となる状況を共有すること。次に「どんな方針で進めていくのか」という意思決定の方向性を示すこと。そして「いつまでに何をやるか」という大まかなマイルストーンをすり合わせることです。

これらの要素が整理されていない場合、外部人材は何を基準に動けばよいのか判断しづらくなります。結果として、期待とのズレが生じやすくなってしまうのです。

「とりあえず良いマーケティング戦略を考えてください」といった曖昧な依頼では、期待通りのアウトプットが生まれることはありません。方針と期待する役割が明確であるほど、外部人材は動きやすくなります。(富家氏)

関係性が先、成果は後――。「お金」は最初の価値観のすり合わせ

次に、業務委託を活用する上では、まず成果よりも優先すべきことがあります。

関係性があることで、行動が変わり、結果がついてくる。この順番を飛ばして、最初から成果やアウトプットだけを求めても、良いパフォーマンスは生まれません。お互いが対等な立場で、気持ちよく仕事ができる状態をつくることが前提です。(富家氏)

その関係性をつくる最初の価値観のすり合わせが「お金(報酬)」に関する取り決めです。過度な値引き交渉や、細かすぎる稼働報告のやり取りは、相手のコミットメントを下げてしまう要因になりかねません。一方で、相場感を踏まえた適切な報酬設定は、「この仕事にしっかり向き合おう」という意識を引き出します。

さらに富家氏は、外部人材の活用においては「自責」で捉える姿勢が不可欠だと語ります。

成果が出なかったときに、「思っていたのと違った」と他責にするのではなく、「どんな支援が足りなかったのか」「依頼の仕方は適切だったのか」と振り返ることで、次の打ち手の精度は高まります。もちろん、すべてが依頼側の責任とは限りません。しかし、仮に多くの要因が相手にあったとしても、自分たちにできたはずの改善点に目を向けなければ、状況は変わらないのです。(富家氏)

こうした振り返りを繰り返していくことで、外部人材の活用における解像度は高まり、結果として組織の実行力も引き上げられていきます。

情報の整備が「業務委託」と「AI」の活用を助ける

そして最後に、依頼側の準備として富家氏が強調するのが情報環境の整備です。富家氏が代表を務めるAiKAGIでは、Notionを活用し、顧客情報や案件データ、契約書、工数、打ち合わせログなどのすべてを一元管理。

外部メンバーが加わった際にも、情報がすべて繋がっているため、「何をすればいいかわからない」という状態が生まれにくいといいます。さらに、このように情報が整理され、データ同士が紐づいている状態は、AIを活用する上でも重要な前提です。情報が分断されている状態では、AIも十分に機能しません。

正しい情報が揃っていて、情報とそのコンテキストが共有されている。その土台がないまま依頼をしても、業務の質にばらつきがでてしまうのは避けられません。組織の責任者としては、こうした環境をいかにつくれるかが、今もっとも大事な部分だと思っています。(富家氏)

業務委託の活用で確かな実行力を手に入れるためには、役割の明確化、良好な関係性、情報整理——。

この3つが揃ってはじめて、業務委託は本当の意味で機能し始めるのです。

業務委託とAIの活用で組織の成長を支えていく

「業務委託であれAIであれ、活かせるかどうかは土壌次第」だと富家氏はいいます。その土壌づくりの核となるのが、情報環境の整備です。

情報が一元化され、文脈が共有されている環境では、外部人材は迷わず動けるようになります。同時に、こうした情報環境はAI活用の前提でもあり、情報が分断されたままでは、誰に頼んでも、どんなツールを使っても、成果は安定しません。

これからは、外部人材を使うか使わないかではなく、使うことが前提になっていくと思います。外部人材のパフォーマンスを最大化できるコミュニケーションや土壌づくりができているかを問い直す時代です。(富家氏)

1人で抱え込むのではなく、必要な領域ごとに外部人材やAIに任せられる環境を作り、自らは戦略や意思決定に集中する。そのために必要なのが、「どの業務を誰に任せるかを判断する力」と、「任せた相手が成果を出せる環境を整える力」です。

「どう使い倒すか」ではなく、「相手が最大のパフォーマンスを発揮するために自分は何ができるか」。

この視点で向き合うことが、外部人材との長期的な信頼関係を築き、組織の実行力を高めていきます。そうした判断と環境づくりを通じて成果を生み出せるマーケターこそが、これからのBtoBの現場で組織の成長を支えていく――。富家氏はそう確信しています。

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本記事で紹介した成果は取材対象企業固有のものであり、すべての企業に同様の効果を保証するものではありません。取材情報は2026年3月現在のものです。
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服部麻梨のアバター 服部麻梨 ナイルのプロ人材活用ナビ 編集者

アパレル販売員・営業職を経て編集者へ転身。多様なキャリアで培った視点を活かしながら、業務委託人材と並走しクライアントのメディア運営を支援。「本当に必要としている人へ、誰もが理解できる情報を届ける」を軸に、編集に取り組んでいる。