正社員1人、でもアシストコンバージョン10倍に。ナイル・伊藤氏が業務委託で実現した記事制作体制

著者:鈴木麻葉
正社員1人で、月200本・累計4,000本超の記事制作を回す――そんな制作体制を実現したのが、ナイル株式会社 自動車産業DX事業部 カルモマガジン編集長を務める伊藤 真二氏です。

カギとなったのは、最大30名の業務委託との協働です。伊藤氏はその運用を通じて、自社メディアの自然検索流入を1年で1,000%増、アシストコンバージョンを約10倍へと伸長させました。

ただ、業務委託を増やせば成果が出るわけではありません。伊藤氏が重視してきたのは、体制づくりとパートナーとの関係づくりです。「発注側は常に業務委託のメンバーからオーディションされている」という意識のもと、選ばれ続ける依頼先であるための実践を積み重ねてきたといいます。

業務委託を活用した座組の設計、パートナー選びの難しさ、選ばれる依頼先であるための心構え、そして予算変動への対応まで、伊藤氏の経験を交えたお話を伺いました。
目次

正社員だけでは埋まらないリソースの壁

現在カルモマガジン編集長を務める伊藤氏は、これまで複数の自社メディアの編集方針や記事制作の全体設計に加え、OKRにもとづく目標管理や予算策定、営業面の調整まで幅広く担ってきました。

編集長として、記事の本数と品質を確保しながら、SEOでの集客や事業成果につなげる――その立場では、「誰が・どこまで・どのスピードで作るか」を常に設計し続ける必要があります。

そうした経験のなかで、正社員だけではリソースの限界があると痛感してきたと伊藤氏はいいます。

SEOメディアではキーワードの幅と記事数が土台になりますが、正社員のみでカバーしようとすると、採用に時間がかかることに加え、体制の規模を柔軟に変えることが難しく、事業のフェーズに合わせて制作ラインを組み替えにくくなるという課題がありました。

正社員だけで制作をまかなおうとすると、人をそろえるまでに時間がかかりますし、体制を急に変えることも難しい。業務委託なら、事業の状況に合わせて契約する範囲を切り出して依頼できるので、どこまでを外に出すかを設計しやすいんです。これは特に立ち上げフェーズだったり仮説検証のフェーズですと顕著です。全てを正社員だけでまかなおうというのは、あまり現実的ではありませんでした。(伊藤氏)

この課題を踏まえ、正社員である伊藤氏は意思決定と目標管理に集中し、コンテンツ制作の実務を業務委託で補う形を選びました。正社員中心の体制では勤務時間や担当範囲の制約が生まれやすく、必要な本数とスピードを同時に満たしにくい――その認識が業務委託導入の出発点になっています。

30人と1人で築いた業務委託の設計図

業務委託運用をうまく機能させるには、まず業務委託の役割を言語化し、明確に切り分けておくことが大前提だと伊藤氏は話します。役割分担が曖昧なままでは、誰がどこまでをチェックして品質を担保するかがはっきりせず、正社員ひとりでは目が届きにくくなるからです。

こうした前提をもとに、伊藤氏は制作ラインを組み上げていきました。最盛期には最大30人の業務委託のメンバーが稼働し、月200本ペースの記事制作を実現。制作スタッフのほとんどは業務委託で、正社員は伊藤氏ひとりでした。

実際の制作体制・ラインは、伊藤氏が制作計画全体と目標・コスト管理を担い、デスク役(編集リーダー)のパートナーが進行と納品確認を担当。執筆・編集・公開といった作業を、ライターや編集者、アシスタントスタッフが受け持つようにしました。また、規模が拡大するにつれ、デスクを複数名立て、それぞれの下に編集者・ライター・公開担当・アシスタントを配置。どこかで詰まっても全体が止まりにくい体制を整えていきました。

当時、デスクが4名、それぞれに編集者が数名ずつついて、その下にライターが大勢いる形でした。デスクが品質の確認を担うことで、私がすべてを見なくても一定水準を保てるようになりました。(伊藤氏)

各パートナーの役割を明確化し、権限を分散させる――それが大量制作を滞らせない設計の肝だったといいます。

時差が生んだ「眠らない制作ライン」

一般的には、関わるメンバーが増えるほど、作業が特定の時間帯に集中しボトルネックが生まれやすくなります。しかし、伊藤氏の体制では海外在住の業務委託メンバーも参加しており、それぞれが自分の都合のよい時間帯に作業した結果、国内と海外の稼働時間が自然に補い合う形になっていました。

結果的に、国内外のメンバーが混在し時差があることで、国内のパートナーの業務時間が終わった後も工程が前に進む土壌ができ、制作が途切れにくいリズムが生まれたといいます。

国内のメンバーが成果物を仕上げたタイミングで、時差のある海外のメンバーが受け取って次の工程を進める。それぞれが自分のペースで作業しているのですが、結果として競合他社が動いていない時間帯にもコンテンツ制作が前に進んでいる状態になりました。(伊藤氏)

この流れも、大量の記事を短期間で積み上げる上での大きな後押しになったと伊藤氏は振り返ります。

選ぶ側もオーディションされているという意識

体制や仕組みを整えても、それだけでは編集ラインは長続きしません。伊藤氏が重視してきたのは、依頼側も常に業務委託のパートナーから選ばれているという意識です。

パートナーは仕事を受けるたびに「この依頼に自分の能力をいくらで提供するか」を判断しており、報酬や業務の設計を誤れば関係は続きません。

依頼する難度が変わるなら報酬も変わるのが当然です。すべて金額に計算し直してお話をする必要がある。やりがいだけに頼るのではなく、対価として成立させること。業務委託をお願いする上で、ここは強く学びました。(伊藤氏)

報酬は文字単価に縛らず業務単位で設計し、委託内容や成果物のスコープが変わるタイミングで必ず見直す――こうした誠実さが、信頼関係の土台になるといいます。

一方で、金額だけがすべてではないとも伊藤氏は語ります。市場感に合う報酬が前提となった上で、「ここで働きたい」という感情を持っていただくことが決め手になるからです。

市場感に合う報酬が前提ですが、それが整ったうえで「やりがい」や「チーム感」が加わると、選んでもらいやすくなります。何かしら「この仕事はおもしろい」と思ってもらえたり、チームとして楽しく働ける場を作れたりすると、報酬だけでは引き留められない部分を補えます。その両方が大事なんです。(伊藤氏)

メディアの成果を共有し、携わった仕事がどんな結果につながったかを伝えること。知見を共有し、1対1で話す場を持つこと。人生に寄り添うこと。こうした積み重ねが、選ばれる依頼先になるための実践だと伊藤氏は話します。

予算が半分になってもメディアが止まらなかった理由

業務委託では、事業計画や予算の変化に合わせて、契約の範囲内で依頼内容や成果物のボリュームを見直しやすい点が強みです。正社員の採用・配置だけに頼る場合、人員を固定費として抱えることになる上、組織の組み替えに時間がかかるのが一般的です。それに対し、依頼内容を発注単位で再設計するほうが、メディアの投資配分が変わる局面でも動きやすくなります。

新型コロナウイルスの影響で予算が大きく縮小した局面では、依頼する業務の優先度や契約上のボリュームを、パートナーともすり合わせながら組み替え、メディア運営自体を止めずに乗り切れた経験があると伊藤氏は振り返ります。

新型コロナで予算を抑える方針となりました。でも業務委託が中心の体制だったから、予算に合わせて柔軟に対応できたんです。あれが全員正社員だったら、実現できなかったと思います。(伊藤氏)

投資を大きく見直さざるを得ない局面では、人件費が固定されているほど、打ち手が狭まる――業務委託中心の体制は、そうした局面での機動力としても機能すると伊藤氏の経験は示しています。

アシストコンバージョン10倍の陰に業務委託あり

こうした体制と関係づくりの積み重ねが、数値にも表れました。「カルモマガジン」では、業務委託メンバーと協働した結果、自然検索流入が1年間で1,000%増アシストコンバージョンは約10倍に伸長。翌年以降もその数字は積み上がり続けたといいます。

あの成果は業務委託なしでは絶対に無理でした。大量の記事でスピーディーに顕在層のキーワードを押さえに行ったことで流入が増えて、アシストコンバージョンも伸びた。1年で目標を大幅に達成し、翌年以降もさらに伸ばすことができました。(伊藤氏)

思いつく限りの施策を実行しきれたのも、クオリティを落とさず大量制作できたのも、業務委託の存在があったからこそだと伊藤氏は振り返ります。体制づくりと関係づくりへの投資が、そのまま数字への投資になっていたといえるでしょう。

伊藤氏が大切にしてきた、業務委託運用の心得

伊藤氏が業務委託の運用について振り返るとき、特に強調するのがパートナーとの日々のコミュニケーションです。

なかでも徹底してほしいのが、問い合わせへの「即レス」だといいます。パートナーが疑問を持ったときに確認が遅れると制作が止まり、双方の損失になるからです。

一番よくないのは、パートナーが疑問を感じた際に制作が止まってしまうことです。仕様や成果物の確認には素早く返すようにしていました。秒で返すから、制作がどんどん進んでいくんです。業務委託が安心して働ける環境作りは、正社員以上に覚悟を持って向き合う必要があります。方法として私はオンラインで参加できる編集部という環境を作り、困ったら聞きに行ける状況にしていました。(伊藤氏)

もうひとつは、判断権限の明確化だと伊藤氏は続けます。「何かあれば相談」だけでは、どこまで自分で決めていいかわからず、パートナーに迷いが生まれます。

「ここまで判断して決めていいですよ」とあらかじめ伝えると、パートナーは迷わず動けます。不安になっても「責任はこちらが持つ、判断はあなたがしていいから」と言うと制作が進む。この判断の所在を明確にしておくことが、大切だと思っています。(伊藤氏)

正社員の枠にとらわれず、誰に・どの工程まで任せるかを設計し直せば、メディアの運営はスピードと質を両立しやすくなります。座組づくりとパートナーとの向き合い方について、自社の現場に持ち帰って試せる打ち手が、ここから見つかるのではないでしょうか。

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本記事で紹介した成果は取材対象企業固有のものであり、すべての企業に同様の効果を保証するものではありません。取材情報は2026年3月現在のものです。

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鈴木麻葉のアバター 鈴木麻葉 ナイルのプロ人材活用ナビ 編集者

イベント・カフェ・雑貨店などを運営する会社にて、イベントディレクターおよび自社雑誌の編集などを担当。その後、結婚式場の広告ディレクションやパンフレット制作を経験したのち、女性向けメディアの編集・ライターとして、コンテンツ制作に携わる。主にビジネス、美容系、ライフスタイル系などの分野を担当。