正社員は自分だけ、業務委託60名で年商1.5億。COUNTER宮田氏が証明した「雇わない成長」の設計図

著者:鈴木麻葉

「優秀なマーケターを採用しようとしても、なかなか応募が来ない」「採用できても、すぐに独立してしまう」――デジタルマーケティング領域でリソース確保に頭を抱えている担当者は、多いのではないでしょうか。

COUNTER株式会社(以下、COUNTER) 代表取締役CEOの宮田 和也氏は、外資系コンサルティング会社やWebマーケティング会社でのキャリアを通じて、「デジタルマーケティングで本物の成果を出せる人材は、正社員として会社に来ない」という現実を肌で感じてきた一人です。

そこで同氏は、創業当初から業務委託のみで体制を構築することを選択。外資コンサル出身者や主婦、若手フリーランスなど約60名の人材と協働し、創業2期目に年商1.5億超という成果を達成しました。

採用に頼らずにどのように専門人材を集め、品質を担保しながら組織を動かしてきたのか。その実践と業務委託活用の考え方を伺いました。

COUNTER株式会社 宮田氏が業務委託活用で得られたこと
目次

正社員ゼロからスタートした、一人法人の選択

COUNTER株式会社は「ローカルから最先端をつくる」をミッションに、「地域DXの新しいスタンダードを創る」をビジョンとして掲げ、2024年1月に創業したスタートアップ企業です。デジタルマーケティング支援やクリエイティブ制作、地域DX支援などの事業を柱に、現在3期目を迎えています。

同社の最大の特徴は、正社員が宮田氏ただ一人という「一人法人」でありながら、業務委託のメンバー約60名を束ねて事業を展開している点です。

宮田氏が創業当初から正社員採用を選ばず、業務委託のみで体制をつくることにしたのは、市場環境を踏まえた明確な判断からでした。

デジタルマーケティングの業界で本当に成果を出せる人は、正社員で来ないんです。スキルがあれば独立して月200万は普通に稼げる。だから優秀な人材を正社員で集めようとしても、そもそも土俵が違う。業務委託で最前線にいる人たちと仕事するほうが、絶対に良いアウトプットが出せると思っていました。(宮田氏)

経営者の先輩からも「創業期は人を入れるな」という助言を受けており、成果物ベースの依頼によって固定費リスクを抑えながら高品質な人材を活用できる点が、この体制を選んだ理由のひとつでもありました。

プロ人材60名をつなぐ、価値観採用と役割設計

業務委託体制の土台として宮田氏が最重視してきたのは、「誰を組織に入れるか」という問いです。スキルや実績よりも先に、価値観(プロトコル)が合う人材かどうかを判断の中心に置いており、採用経路の8割はリファラルです。求人広告を使わないのは、カルチャーの希薄化を防ぐためだといいます。
株式会社COUNTER宮田氏
COUNTER株式会社 宮田氏

スキルは教えられますが、感性や仕事への姿勢は変えられません。プロトコルが合っていれば、2往復かかる確認が1往復で済む。コミュニケーションコストが圧倒的に変わります。合わない人が一人入るだけで、組織全体のリズムが崩れる経験をしてきたので、ここは絶対に妥協しないようにしています。(宮田氏)

XやYouTubeでの情報発信や媒体でのブランディングを続ける中で、価値観の近い人材が自然と集まってくるようになったと宮田氏は話します。

マーケティングチームと制作チームの2軸構成

COUNTER株式会社の組織は、「デジタルマーケティングチーム」と「制作チーム」の2軸で構成されています。

マーケティングチームは宮田氏がリーダーを務める一方、実質的な現場のとりまとめは、大手専門商社出身でマネージャー経験を持つメンバーが担っています。その下にSEO・デジタルマーケティングのコンサルタント、さらにオペレーション業務を担うメンバーが多数参加しています。

制作チームは、長年の協働を通じて宮田氏の右腕的存在となった業務委託メンバーがリード。このチームの特徴は、業務委託メンバーにとどまらず、業務提携する実力派クリエイティブ企業との連携にあります。

国内外のアワード受賞歴を持つデザインスタジオや大手ブランドのディレクション経験を持つ制作会社など、表には出にくい実力派クリエイティブ企業5社(デザイン会社3社・開発会社2社)がパートナーとして連携する体制です。

この布陣によって、大手企業のコーポレートサイトリニューアルやブランドサイト制作でも、他社との差別化を実現できる水準のクリエイティブを提供しています。

こうした2チーム体制を機能させる上で、宮田氏がこだわったのが役割の明確化です。

業務委託組織でありながら、担当する業務の範囲と期待するアウトプットを職種ごとに明文化しており、メンバーそれぞれが自分の役割と成果物の基準を把握した上で参加しているため、指示待ちではなく自律的な動きが生まれやすい環境が整っています。

コンサル出身者、主婦層、若手フリーランスの3層構成

業務委託のメンバーは大きく3つの層で構成されています。外資系コンサルティングファーム出身者が副業として戦略・分析・提案を担い、主婦層と若手フリーランスが被リンク代行・記事構成の作成・キーワード選定などのオペレーション業務の中心を担う分業体制です。

外資系コンサル出身の方たちは、プロフェッショナルとしての意識がまったく違います。期限を守る、情報管理を徹底する、依頼した成果物の質を妥協しない――そういう当たり前のことが、確実にできる。このメンバーがいることで、クライアントへのアウトプット水準が引き上げられています。(宮田氏)

オペレーションを担う主婦層は、意図的に採用したというよりも、口コミで自然に広がっていったといいます。いっしょに仕事を重ねる中で、宮田氏はその仕事ぶりに厚い信頼を寄せるようになりました。

たくさんの主婦の方と仕事をしてきましたが、彼女たちは仕事への責任感が本当に素晴らしいんですよ。依頼した成果物を期限どおりに確実に納品してくれる。誠実に向き合ってくれる方が多くて、組織の中で大きな役割を担ってくれています。今、オペレーションを担う方は30人ほどいますが、ほぼ主婦の方です。(宮田氏)

そのほか、Xでの発信をきっかけに参加してくれた若手フリーランスも加わり、それぞれが自分のペースと強みで稼働する体制が整っていると宮田氏。

外資コンサル出身者と主婦層を中心に据える理由のひとつには、情報管理に対する信頼感があると話します。

独立系のフリーランスの中には、複数の取引先を持ちながら業界内での接触をSNSに投稿するなど、情報管理の意識が薄いケースも少なくありません。宮田氏が仕事を続ける中で、外資コンサル出身者や主婦層はそうした観点からも信頼を置けると感じ、意識的に起用しているといいます。

SOPとエンゲージメント設計で実現した、自律型の組織

専門人材を確保するだけでなく、誰が参加しても一定水準のアウトプットが出せる仕組みの整備に、宮田氏は創業当初から注力してきました。

その中核となるのが、SOP(標準作業手順書)の整備です。業務の目的・概要・期待する成果物の品質基準・完成形のアウトプットイメージを文書化し、各メンバーが共通認識を持った上で業務に取り組める環境を整えています。

ITコンサル時代にシステム運用設計書をたくさん書いてきた経験があったので、成果物の基準を文書に落とすやり方だけは、わりと早く取り組めた部分でした。特にオペレーション系の業務は、誰がやっても同じ結果が出る状態をつくることが大事。成果物の最終確認は私が担いますが、それ以外はほぼ自律的に回せるようになっています。(宮田氏)

仕組みと並行して意識しているのが、業務委託メンバーとの信頼関係の構築です。スキルアップの機会や人脈の紹介といった機能的な価値を提供しながら、「COUNTERのブランドに関わっている実感」「信頼できるコミュニティへの帰属感」という情緒的な価値も大切にしています。

食事の場を通じた直接のコミュニケーションも定期的に持ち、「このメンバーと仕事したいから参加している」という主体的な動機が生まれるよう、関係性を育むことを意識していると宮田氏。
株式会社COUNTER宮田氏
さらに近年は、LLM(大規模言語モデル)を活用した社内ツールの開発が進んでいます。これまで人手で行っていたオペレーション業務の自動化が着々と進む中、業務委託メンバーの役割はAIでは対応できない戦略立案や品質評価へと移行しつつあります。

大手案件の獲得と、成果物ベース契約が生む利益構造

業務委託の体制と仕組みの整備が実を結び、COUNTERには東証プライム上場企業を含む大手クライアントからの案件が集まるようになりました。コーポレートサイトのリニューアルや大規模なデジタルマーケティング支援など、大手企業の案件を直接受注しています。

宮田氏が業務委託体制の強みとして挙げるのは、受注額に対して安定した利益率を確保しやすく、売上を上げやすい構造です。クライアントから受け取る報酬の中から業務委託への支払いを賄う形のため、案件規模に関わらず固定費が膨らみにくい構造になっています。

必要な専門性はその都度パートナーに依頼して確保できるため、少人数でも大手案件に対応できる体制を維持できるといいます。

専門性を持ったプロが一定の成果を出せれば、会社のブランドが伸びて、より大きなお客さんと仕事ができるようになります。そうなればなるほど、利益率を保ちながら大きな売上を立てることができるんです。依頼する側にとっても、普通の広告代理店に任せるより安いですし、強い人材で固めているから成果も出る。しっかりメリットがあると思います。しかも、必要なときだけ動いてもらえる変動費の構造なので、リスクを抑えながら売上を拡大できる。これが業務委託活用の一番の強みだと思っています。(宮田氏)

この構造が、創業2期目に年商1.5億超という成果の土台となりました。固定費のリスクを抑えつつプロ人材による業務体制が売上の高さにつながり、事業拡大への投資余力を生み出しています。

今後はベンチャーキャピタルからの資金調達を経て、埼玉を起点としたローカルメディアプラットフォームの開発・運用という第二の事業の本格稼働を計画しています。

また、資金調達のフェーズに合わせて、正社員の採用も段階的に進める方針です。案件ごとの業務委託契約を通じて蓄積してきた成果物の品質基準やノウハウを土台に、クライアント対応や経営判断など正社員が担うべき領域を明確にしながら、持続的に成長できる体制づくりを進めていきます。業務委託主体の柔軟な体制を維持しながら、さらなる事業拡大を目指しているところです。

業務委託に向いている仕事、コアメンバーが担う仕事

2年間の実践を通じて、宮田氏は業務委託とコアメンバーの役割分担について明確な考えを持つようになりました。

業務委託が力を発揮するのは、専門性が高く、AIでは到達しにくい水準のアウトプットが求められるプランナー・コンサルタント業務です。

AIが出せる品質は75点程度だと感じています。プランナーやコンサルタントとして参画しているパートナーは専門性が高く、品質を95点まで持っていけます。専門性が高い業務こそ、AIを超える水準を出せる業務委託のプロに依頼することに大きな意義があると思っています。(宮田氏)

一方で、クライアントとの直接コミュニケーションや最終的な意思決定・責任が伴う業務は、正社員やコアメンバーが担う必要があるといいます。

お客さんとの直接のコミュニケーションは、責任が伴う場面です。どれだけ優秀なパートナーがいても、そこだけは正社員やコアメンバーが担うべきだと思っています。業務委託に依頼する範囲と、自社が責任を持つ範囲の線引きは、その一点を軸に考えるとシンプルになります。(宮田氏)

採用に頼らなくても、適切な業務設計と信頼できるパートナーとの関係があれば、事業は前に進められる。デジタルマーケティング領域でのリソース確保に悩む担当者の方は、「誰に・何を・どこまで依頼するか」という問いから始めてみてはいかがでしょうか。
---

本記事で紹介した成果は取材対象企業固有のものであり、すべての企業に同様の効果を保証するものではありません。取材情報は2026年3月現在のものです。
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!

事業成長に必要なノウハウとリソースをプロ人材で確保しませんか?

事業成長に必要なノウハウとリソースをプロ人材で確保しませんか?
新規事業の立ち上げや事業拡大にてお悩みはありませんか?大手出身者や特例領域のエキスパートが、貴社の課題をどう解決できるか、無料相談でお話できます。具体的な事例もご紹介可能です。
  • URLをコピーしました!

鈴木麻葉のアバター 鈴木麻葉 ナイルのプロ人材活用ナビ 編集者

イベント・カフェ・雑貨店などを運営する会社にて、イベントディレクターおよび自社雑誌の編集などを担当。その後、結婚式場の広告ディレクションやパンフレット制作を経験したのち、女性向けメディアの編集・ライターとして、コンテンツ制作に携わる。主にビジネス、美容系、ライフスタイル系などの分野を担当。